いよいよ卒業まで残りわずかとなってきました。
私は卒展に下の2足を出展します。
Button-Up Derby
Hidden Brogues
振り返ると、あっという間の2年間でしたが、卒展の2足を作り終わってからやっと自分の目指すべき靴作りとは何か、少し見えてきたような気がします。
つい最近までの私は、アッパーのステッチを綺麗に縫う、中底加工・掬い縫い・出し縫いの精度を上げるといった技術面ばかりを見ていたように思います。もちろん、それは大切で今後もずっと向上を目指して努力を続ける必要があると思います。しかしながら、最近あることがきっかけで、そういった技術はあくまで「手段」であって「目的」ではないということに気付かされました。
つまり、目指す靴のイメージを実際の形にする手段として技術は不可欠ですが、それだけではなくデザイン・仕様などを設計する段階で靴の最終形にとって最適な要素を慎重に取捨選択していく、いわばどんな靴を作るかという「目的」に関係する作業も重要であるということです。
例えば、目指す靴のイメージに最も適合するラストとはどんな曲線を描いているべきなのか、その曲線を活かすためにラストの面積に対して各パーツが最も美しく見える比率とは何なのか、それらの特徴と調和するどんな意匠が最適なのかという点を時間の許す限り追求するべきであり、そういう目を養うことも勉強の一環であると痛感しました。
そう考えると、私の作った靴はただやりたい技術を盛り込んだだけという気がします。どんな靴をつくるかという目的が曖昧で技術面ばかりを見ていたのでバランスを欠いてしまったのだと思います。まさに木を見て森を見ず…です。
今思えば、ギルドのショップに展示してある製品や授業のサンプルの靴など、意匠のさじ加減、バランスの面で参考となる手本が沢山あったのに、もっと見て学んでおくべきだったと反省しています。
上記のことを卒業間際で気付いたのは遅かったとは思いますが、それでも自分の目指すべき靴作りの方向性を見いだすことができてよかったと感じています。もし誰かから2年間で学んだことは何かと尋ねられたなら、私は迷わず靴作りは「手段」だけでなく「目的」も大切であると答えることでしょう。